俺は彼女に沼っていた。
経理部の真行寺ひかり、26歳。
眼鏡にそばかす、いつも三つ編み。会社で一番地味な女。
なのに抱くと、触れるたび全身が跳ねる。指でも舌でも壊れたようにイく。
――その体質を、俺だけが知っていると思っていた。
※
残業の夜、資料室の扉が細く開いていた。
中から聞こえたのは、俺だけが知っているはずの声だった。
相手は、部長だった。
そして三年前から続いていた。
彼女が入社した年から、ずっと。
会議の前の十五分。出張先のビジネスホテル。
やがて部長は、別の管理職を連れてくるようになった。
二人が三人になり、四人になった。
彼女はもう、今日は何人ですかとも聞かなくなっていた。
※
俺が沼った理由は、俺が見つけたものじゃなかった。
三年かけて、あの男たちが仕込んだものだった。
俺は、二番目ですらなかった。
――それでも、ひとつだけ。
体はすべて明け渡していた彼女が、
一度だけ、はっきりと顔を背けた場面があった。
「……それは、だめです」
そしていつか彼女が、俺にだけ言った一言がある。
「……キス、していいですよ」
その意味を、俺はこの夜、初めて理解した。
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※AI生成画像を加筆、修正した作品となります。